【ご報告】本学院元理事の業務上横領に関して
2023/11/01
本件における再発防止の進捗等
学校法人尚絅学院
理事長 加藤 正名
2022年7月、本法人における3億5,000万円の使途不明金の存在が発覚し、元常務理事(2022年
9月9日解任)が4回にわたって本法人から総額3億5,000万円を持ち出し、自己の口座に入れて投資
を行っていたことが判明いたしました。その後元常務理事の虚偽説明に基づき、使途不明金回収の
ため本法人から4,500万円を騙し取った行為は、横領及び詐欺的行為であり、本法人へ財政的な損
失を与えただけでなく、社会的信頼を大きく失墜させると同時に本法人に関わる全ての人に大きな
失望と落胆を与えました。
本法人に関わる全ての皆様に改めてお詫び申し上げます。
本件における再発防止の進捗等について、ご報告をさせていただきます。
本法人では、前理事長・学院長が2022年12月31日に辞任し、2023年1月1日より加藤正名新理事
長及び佐藤司郎新学院長を迎え、また、4月1日には、新たに鈴木寿総務担当常務理事・事務局長、
千田三郎財務担当常務理事、石井達常勤監事が就任し、この難局を乗り切る体制が整いました。
経営基盤の安定を図るため、市中銀行より5億円を借り入れ、当面の資金を確保し、今年度より
毎年1億円の返済が行われています。一方で元常務理事には、横領した3億9,500万円の支払い督促
の措置を講じていますが、現時点で回収された金額は保有財産の売却等による2,700万円程である
ことから、引き続き本人に賠償請求を行っていきます。また、前理事長及び前事務局長に対して賠
償請求した4,500万円は、本年8月に全額回収されています。
2022年12月22日の臨時理事会及び評議員会で承認された22項目にわたる再発防止策は、既に再
発防止実施委員会において具体的な施策が立案実施され、その進捗を再発防止進捗管理委員会で
チェックすることにし、その状況を理事長並びに理事会及び評議員会に報告し、同時に日本私立学
校振興・共済事業団及び文部科学省に報告しています。また、日本私立学校振興・共済事業団に対
しては、本年7月に改善状況報告書を提出し、それに基づくヒアリングが8月に行われました。
なお、私学事業団からは、元常務理事の非行により、学校法人の管理運営が適正を欠くとの理由か
ら、2022年度の私立大学等経常費補助金交付は25%減額の措置となりましたが、2023年10月23日
に2023年度の私立大学等経常費補助金交付については、再発防止策が適正に行われていることが評
価され、減額措置はないとの通知がありました。再発防止の進捗については、以下をご覧ください。
元常務理事の業務上横領事件の裁判は、2023年3月29日仙台地方裁判所で初公判が行われ、元常
務理事は起訴内容を認め、5月8日の第2回公判で検察側は懲役8年を求刑し、6月22日の第3回公判
で懲役7年が言い渡され、その後控訴はなく刑が確定しました。
本法人は、今後も文部科学省及び日本私立学校振興・共済事業団からの指導・助言のもと、
再発防止策に真摯に取り組み、学生・生徒・園児、教職員及び全てのステークホルダーの皆様の
信頼回復に努めていく所存です。
本法人に関わる全ての皆様には、これまで同様に本学院の教育理念と活動をご理解いただき、
引き続きご支援を賜りたくよろしくお願い申し上げます。
以上
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再発防止の進捗
(1)理事長を中心とするガバナンス体制の改善
〇常務理事の複数配置による理事長補佐体制の改善
1.常務理事2人制(総務担当、財務担当)
総務担当常務理事に事務局長鈴木寿、財務担当常務理事に理事千田三郎を選任し、
4月1日に就任した。
2.事務局長を総務担当常務理事に任用(事務局長の権限強化)
事務局長に選任した鈴木寿を総務担当常務理事に選任し、4月1日に就任した。
また、学校法人尚絅学院寄附行為施行細則を改正し、総務担当常務理事の役割と
職務を定義し、事務局長の権限強化を図った。これに合わせ尚絅学院事務局職務
権限規程、尚絅学院役員報酬等に関する規程及び尚絅学院退職慰労金支給規程を
改正した。
3.理事長・常務理事・事務局長の役割と権限の整理(個々の権限の縮小と合議事項の拡大)
学校法人尚絅学院寄附行為施行細則を改正し、総務担当常務理事と財務担当常務
理事の役割と職務を定義した。これにより総務担当常務理事と財務担当常務理事の
個々の権限の縮小と合議事項の拡大が図られた。また、尚絅学院稟議規程、尚絅学
院経理規程及び尚絅学院資金運用規程を改正し、理事長、常務理事、事務局長の役
割と権限が整理され、合議事項の拡大も図られた。さらに、本法人の組織の使命・
目的達成のため、理事長の職務権限と役割をまとめた。
4.理事長・常務理事の任期回数と期間は原則2期6年
理事長・常務理事の任期回数と期間を原則2期6年とすることを明確に規定するため、
学校法人尚絅学院寄附行為施行細則を改正した。
(2)諸規程の遵守の徹底
〇手続き、事務組織の見直し、決裁権限、資金移動、自己宛小切手の禁止、運用者倫理等について規程改正
5.尚絅学院稟議規程の改正
稟議手続きは、総務担当常務理事と財務担当常務理事が合議し、学院長の承認を
経て、理事長が最終決裁することを明確にした。また、稟議状況を毎月の常任会に
報告することを定めた。
6.尚絅学院経理規程の改正
出金伝票の金額に応じ100万円以上は経理責任者、500万円以上は事務局長の決裁
権限を定め、決裁ルートを整備した。また、資金移動は学院保有口座間のみに限定し、
それ以外の口座への移動を禁止とした。さらに自己宛小切手の発行禁止を定めた。
7.尚絅学院資金運用規程の改正
運用者倫理の条文を新たに定め、金融取引の制限などを明確にした。また、資金運
用会議の構成員に加え、稟議規程に基づいた資金運用手続きを条文に定めることで理
事長の決裁権限を明確に定めた。さらに運用状況の報告を理事会のみでなく評議員会
に行うことも定めた。
8.その他管理運営関連規程の改正
関連規程の改正は、各項目(1)~(7)に記載した。
9.尚絅学院大学ガバナンスコードの改正(監事の適合性の公表)
建学の精神に基づく大学の使命を明文化し、常務理事2名体制、常勤監事の設置、
監査協議会の設置、役員及び評議員へ研修を義務付け、学長補佐体制を明示した尚絅
学院大学ガバナンスコード<第2版>に改正した。また、2022年度尚絅学院大学ガバ
ナンスコードについて、監事による取組み状況とガバナンスコードへの適合状況の確
認が行われ、尚絅学院大学ガバナンスコード<第2版>と適合性をホームページで公表
した。
(3)監査体制の充実
〇監事の役割強化
10.常勤監事の配置
これまで監事2名は非常勤であったが、内1名を常勤監事とし、石井達を選任し、
4月1日に就任した。常勤監事は、内部監査室と連携し、監査計画立案や学内情報収集
のため、理事長、事務局長及び各学校長と打合せや面談を行うなど精力的に活動して
いる他、常任会、理事会及び評議員会に出席している。
11.監査室の設置
理事長直轄の内部監査室が設置され、監査室に事務職員1名を室長として配置し、
内部監査をはじめとする業務監査、内部会計監査、情報システム監査及び公的研究
費監査を行うとともに、常勤監事をサポートする体制を整えた。監事、公認会計士
及び内部監査室が相互に連携を行うことができ、情報共有や監査範囲の重複を回避し、
効率良く監査を実施することが期待される。定期的な協議の場として、監査協議会を
開催し、内部監査、監事監査及び会計監査全ての監査を報告しあうことで、監査にお
ける課題や取り組みなどの情報交換を行い、学院全体で監査状況(検証・評価結果、
改善の助言・提言など)を把握し、学院の健全な発展と社会的な信頼の保持に資する
ための連携強化を目的としている。尚絅学院内部監査規程及び尚絅学院監事監査規程
を改正した。
12.公益通報窓口の移管
公益通報制度における通報相談の受け手として、監事を活用することとし、内部監
査室に公益通報窓口の機能を移管した。また、外部通報・相談窓口を設置した。尚絅
学院公益通報者保護に関する規程を改正した。
(4)常務理事の適正な選任方法の改善と職務内容の見直し
〇選任規準とけん制
13.財務担当常務理事の選任方法(基準)の改善
財務担当常務理事の選任方法の基準として、「原則私的投資を行っているものは選任
しない」こととした。この基準を踏まえ財務担当常務理事選考委員会では、候補者との
面談の際に私的な金融取引に関して確認が行われた。なお、信用取引、先物取引、オプ
ション取引、外国為替取引及び仮想通貨取引など値動きの激しいものやレバレッジをか
けた取引をハイリスク投資と定義づけ、次の財務担当常務理事の選任方法(基準)に明
記することにした。また、任期について、原則として最大2期とすることを明記した。
14.財務担当理事の職務内容の整備
財務担当常務理事の職務内容を寄附行為施行細則に定めた。また、常務理事が、事務
分掌の業務範囲を超えて事務職員に指示することを禁止するために、その役割を明確に
した。
(5)役員及びSD研修の充実
〇私学法等法令遵守、規程遵守、危機意識の醸成、報連相
15.役員・評議員研修の実施
2023年3月27日に役員及び評議員を対象とした第2回再発防止研修会を開催した。
講師に三島卓郎弁護士を招き、学校法人の役員の責務(リスク管理とコンプライアンス)
をテーマに研修を行い、33名が参加した。欠席者には資料を配布した。12月1日開催予定
の役員及び評議員研修(再発防止研修)は、毎年行っている本法人独自の取り組みである
理事・評議員・監事の合同懇談会(研修、意見交換等を実施)内で役員の責務と職務内容
II(私立学校法改正)(仮)をテーマに実施する予定である。
なお、役員研修は、次年度以降も継続して実施する。
16.職員のコンプライアンス研修
17.職員のガバナンス研修にコンプライアンスの内容を含む研修としたことから、3月
に改めてコンプライアンス研修を開催しなかったが、2023年7~9月にかけて、自分を守
るためのコンプライアンス、幹部として実践すべきコンプライアンス、幹部として実践す
べきコンプライアンス及び学校法人におけるスクールコンプライアンスの留意点をテーマ
にeラーニングなどを活用したコンプライアンス研修を実施した。
17.職員のガバナンス研修
2023年2月24日に役員及び評議員並びに事務職員を対象とした第1回再発防止研修会を
開催した。講師に南浩司日本私立学校振興・共済事業団私立経営情報室長を招き、役員の
責務と職務内容Ⅰ(私立学校におけるガバナンス)をテーマに研修を行い、役員及び評議
員22名、事務職員56名が参加した。欠席者には資料を配布した。
なお、2023年7~9月にかけて、学校法人のガバナンス研修をテーマにeラーニングを活
用したガバナンス研修を実施した。
18.職員のリスクマネジメント研修
17.職員のガバナンス研修にリスクマネジメントの内容を含む研修としたことから、3月
に改めてリスクマネジメント研修を開催しなかったが、2023年7~9月にかけて、大学にお
けるリスクマネジメントをテーマにeラーニングを活用したリスクマネジメント研修を実施
した。
また、規程・制度を理解し、業務におけるリスクを減らすことを目的に再発防止に係る
改正規程説明会を事務職員対象にオンライン開催した。事務職員52名が参加した。欠席者
にはアーカイブ配信を行った。
19.新任及び昇格者のビジネススキル研修(報告・連絡・相談)
2023年9月4日に事務職員の新任者を対象としたビジネススキル研修を開催した。講師
に近江昇有限会社OMF代表取締役を招き、階層別研修(新任者・若手研修)をテーマに
研修を行った。事務職員の昇格予定者のビジネススキル研修は、2023年12月~2024年
3月に昇格者へのビジネススキル研修(仮)をテーマに研修を予定している。
なお、2023年4月に入職した事務職員3名には、内定者研修として、2022年12月から
2023年2月まで、集合研修を2回、職場体験を2日間、自宅学習(eラーニング)を実施
した。
(6)事務組織の見直し
〇組織面からけん制
20.財務課を財政課と経理課に分ける
財務課を2023年4月1日から、財政課と経理課に組織上分離し、資金の決裁と出金に
対してのチェック機能とけん制機能を持たせた。現在、財政課は課長を含め3名、経理
課は課長を含め4名で業務運営が行われ、チェック機能とけん制機能が働いている。
また、それぞれの役割を定めた尚絅学院事務分掌規程を改正した。
この組織の見直しに伴い、関連する尚絅学院電子取引データ保存に関する事務処理規
程、尚絅学院評議員候補者(職員)選出規程、尚絅学院組織規程、尚絅学院組織図、尚
絅学院管理運営に関する規程、尚絅学院稟議規程、尚絅学院公印取扱規程、尚絅学院大
学授業料等減免規程、尚絅学院大学新型コロナウイルス感染症に伴う授業料減免規程、
尚絅学院教育振興寄付金募金委員会規程、尚絅学院マイナンバー取扱い規程、尚絅学院
情報セキュリティ規程、尚絅学院厚生資金貸付規則、尚絅学院経理規程、尚絅学院資金
運用規程、尚絅学院情報開示規程、尚絅学院大学特待生に関する規程、尚絅学院大学入
学時特待生に関する規程、尚絅学院大学在学特待生に関する規程、尚絅学院大学私費外
国人留学生納付金減免規程を改正した。
(7)報告・連絡・相談の徹底
〇組織風土の改善(意見具申、意見受け入れ)
21.事務職員の業務相談窓口の設置
相談しやすい組織風土の醸成、部長・次長・事務長が職員をフォローすることを目的
とした業務相談窓口を設置した。
22.事務管理職位者の面談体制の整備
職員の自律的な成長支援と挑戦的な組織風土の確立、コミュニケーションの活性化に
よる信頼関係の構築とエンゲージメントの向上を目的とした面談体制を整備した。